歯科のスタディグループ北九州歯学研究会

活動報告

【2022年2月12・13日】第45回北九州歯学研究会発表会 質問に対する回答

■ シンポジウム 1

 

Q) ミニマムなアクセスキャビティであれば、咬頭被覆が必要なくCR充填で対応可能ということでしたが、根拠はあるのでしょうか?

A) 残存歯質の少ない無髄歯ばかりでなく咬合負担の大きい無髄の臼歯にもCR修復は有効であるという研究が現在あるようですが、私はまだ臨床的裏づけが十分ではないと感じています。歯の構造の損失が大きいほど応力集中が高くなると言われていますので、機能咬頭を含んで十分な歯質が残り、負荷が大きくない部位の場合にCRにて修復しています。

 

Q) 感染根管において根尖に歯根吸収があり、根尖孔が開いて根尖孔の先に赤い軟組織が見えているケースなどの場合はMTAを使用した方が良いのか、通常通りGPにて根充した方が良いのかご教授ください。

A) 基本的には再治療の可能性を残したいので、GPにて充填した方がよいと考えております。MTAで根管充填を行う場合はお問合せのような根尖孔の先が見えるストレートな根管で、確実に根尖にMTAを充填できること、根管充填後のトラブルにどう対応するかが決まっていることなどを考えて使用しております。

 


■ シンポジウム 2

 

Q) 骨面の肉芽組織の除去において、不良肉芽の除去が大切だと思いますが、 炎症性肉芽組織の除去の目安を教えてください。また、歯根面のでデブライドメント歯根面をあまり、傷つけてもダメだと思いますが、どのくらいまで、デブライドメントしたら、よいか目安などあれば教えてください。

A) 炎症性肉芽組織の除去は、出血を止め術野を見やすくすることが目的なので、骨面が見えるようになるまで除去し、一旦出血がないような状態を目安としています。根面のデブライドメントは、目安としてはよく切れるスケーラーでストロークしても、抵抗感のないところまでを目安としています。病的なセメント質の除去に関しては、文献によると、スケーラーで7から10ストロークすると十分であるという報告があります。

 

Q) 骨欠損を生じた原因(セメント質剥離なのか純粋なペリオなのかなど)によって使用する材料や術式の使い分けについてお考えがあれば教えてください。
また、手用器具の一覧表はありますか?

A) 使用する材料や術式に違いはありませんが、再生された新生セメント質が無細胞セメント質である点や象牙質への接着の観点からエムドゲインが使用できるのであれば、必ず使用したいと考えています。また、セメント質剥離の場合大きな骨欠損を伴うことが多いので、骨補填材を併用することが多いです。

 

▼手用器具の一覧表

 

Q) 最後のケースで、切開線を近遠心に延長しておりましたが、補綴予定のため大きく切開したのでしょうか?また、舌側にMPPTの切開線を設定した理由を教えていただけると幸いです。

A) 上顎前歯部全体的にポケットが深いところがありましたので、13〜23で歯肉弁を展開しています。11と21間は再生療法のための歯間乳頭保存術を、他部位に関しては審美的な対応として歯間乳頭保存術を選択しました。11、21間は歯間乳頭幅が2mm未満でしたのでsimplified papilla preservation flapを他部位は2mm以上ありましたのでpapilla preservation technique かmodified papilla preservation techniqueどちらがいいかというご質問かと思います。上顎前歯に関して、よほど骨欠損の形態として頬側に切開を入れた方が有利な場合以外は、私は基本的に舌側に切開を入れています。頬側に入れた方が血流の関係でよいとCortelliniは言われていますが、とはいえもし裂開などで創傷治癒がきれいにならなかった場合が怖いので、舌側に入れています。ご質問ありがとうございました。

 

Q) 素晴らしい症例大変勉強になりました。松延先生に質問なのですが、歯周組織再生療法後、様々な理由で再度アプローチすることもあると思うのですが、その際注意する点などありましたらご教授ください。

A) 骨欠損状態を把握し、コンベンショナルや低侵襲など、どの方法であれば良好な治癒に導けるか検討し切開線を設定する。

 

Q) 松延先生に質問です。先程の最後の症例で上顎前歯部の再生療法時に上唇小帯を同時に除去されていましたが、小帯除去のタイミングと方法、ポイントがあれば教えてください。

A) 絶対に小帯切除が必要なケースでは、前もって小帯を切除し、切除部位が治癒してから再生療法を行うのが一番確実です。しかし、提示した症例のように術中に小帯を切除する必要性が出た場合は、縫合が終わってから切除するのがよいと思います。最終的にフラップをどこまで展開するのかは骨欠損の深さなどによって決まるため、先に小帯を切ると場合によっては重要な場所に交通してしまったりする可能性もあります。また、小帯を切除した後、頬粘膜を引っ張り、縫合した歯肉弁が動かないのを確認する必要があるため、縫合後に小帯を切除した方がよいと考えています。ご質問ありがとうございました。

 

Q) 結合組織移植時の縫合に用いる糸の太さと種類、縫合の手技の選択方法を教えてください。

A) 部分層で開き、骨膜縫合で結合組織を固定する場合は吸収性の縫合糸(バイクリル6−0 強弯 11mm 9mm(接着できる面積が少ないため)などを用います。今回のケースのように全層で開いた弁に貼り付ける場合は、5-0、6-0 弱弯(接着面積を増やすため)13mm-15mmなどがいいと考えています。糸は細ければ細いほど、歯肉へのダメージや術後の炎症が少なくなります。このことを考慮し、術者の技量や環境(どこまで拡大した視野でできるのか)等で変わるのかと思います。よろしくお願いいたします。

 

Q) 分岐部病変では骨補填材は必ず使用しますか。その場合はEMDと混ぜるのでしょうか。またリグロスの評価はいかがでしょうか。

A) 分岐部病変は血液供給を考えると非常に厳しい部位であるので、EMDが使用できるのであれば使用しています。基本的に分岐部病変はメンブレンの使用が推奨されています。欠損の大きさにもよりますが歯肉弁が陥凹するのであれば補填材も使用します。リグロス(FGF)は血管新生が強力な成長因子なので、粘膜の創傷の治癒には有効であると考えています。ただし強力なサイトカイン療法であるため、減張切開などを用いた再生療法では使用しないほうが良いと考えています。(組織が増殖しすぎる可能性があるため)

 

Q) より深く、より狭い骨欠損が再生療法の適応であると述べられましたが、具体的にどのように術前に判断しているのでしょうか?また、浅く、幅の広い骨欠損の場合はどのように対応しているのでしょうか?

A) 瀬戸先生回答
デンタルX線写真とプロービングポケットデプスを主に、術直前のボーンサウンディングにて骨欠損形態を予測しますが、より詳細に把握したい場合はCT撮影を行います。浅く、幅の広い骨欠損の場合はケース・バイ・ケースでしょうが、歯周基本治療でメインテナンスへ移行するかもしれませんし、切除療法、組織付着療法等が適応症かもしれません。

 

Q) 血餅の安定こそが骨再生において重要と考える中でPRGFなどは血餅の代替として十分な役割を果たすと考えるか?再生を目指す場に隣接した骨面からの出血とその血餅こそが大切なのでしょうか?骨面からの出血こそが大切と考えるならばその違いは何であり、また骨面からの出血を促すために注意していることなどあれば教えてください。

A) PRGFは血餅の代替ではなく、血餅そのものと捉えています。骨面の骨髄由来の出血とPRGFの違いは、骨髄由来の出血は、未分化間葉細胞を多く含み、PRGFは血小板を 濃縮したものであり、その中の成長因子(PDGFなど)が幹細胞に作用することを主目的としている点だと認識しています。皮質骨様の骨で出血がほとんどない場合は、骨面からの出血を施すために、ヤグレーザーやバーでデコルチケーションを行っています。骨腔と呼ばれるスペースに入り込んでいる肉芽も丁寧にとるとより骨髄由来の出血を促せると考えています。よろしくお願いいたします。

 

Q) 樋口先生に質問です。大臼歯の歯根間距離が狭く、歯間乳頭を保存して頬舌側それぞれ剥離した切開方法で行った症例がありましたが、その術式を行う際の適応や注意点等少し詳しく教えてください。

A) 隣接部の骨欠損の状態を把握しておくことが重要となります。出来るだけ骨の裏打ちがあるところに切開線の設定を行うようにしています。CTなどで骨欠損形態を把握することが重要です。

 

Q) 素晴らしいご発表に感動しています。有り難うございます。皆様に質問ですが、現在、骨補填材は何を用いていらっしゃいますでしょうか?長期に経過を診てみますと根面と癒着したり、骨補填材が感染を起こしたりすることがあります。早期に吸収する補填剤でだと骨の落ち込みがみられます。ご教授の程、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

A) 樋口琢善先生回答
採取できるのであれば自家骨を使用しています。採取できない場合はFDBAかDFDBAを用いています。バイオスを用いる場合はEMDと混合して使用しています。経験によるものでエビデンスはありませんが、バイオスは吸収せずに残存する場合があり、それが感染源となることを経験しているため、バイオス単味での使用は控えています。EMDと混ぜると問題は少なそうです。他はβーTCPなども用いています。

 


■ シンポジウム 3

 

Q) CRでプロビジョナルレストレーションの調整を行う際、歯面に接着せずプロビジョナルレストレーションに接着させるため何か処理はされていますか?

A) 歯面へは、分離材を塗っております。具合的には、当院ではトクソー レジンセパレーターを紙面に塗布してから調整しております。即時重合レジンにて作成したプロビジョナルレストレーションにコンポジットレジンを接着させるときには、プロビジョナルを一層削り、新鮮面を出して、そこにリベースエイドなどの接着剤を塗布して、そこのコンポジットレジンを接着させております
もしくは、プロビジョナルの新鮮面を出した後に一層即時重合レジンを添加し、硬化する前にコンポジットレジンを添加する方法を行なっております。

 

筒井先生
Q) ダブルスキャンとシングルスキャンの精度の違いはどの程度でしょうか

A) 精度の差と言うよりも、ダブルスキャンした場合は形態を模倣出来ますので補綴装置set後の調整が格段に少なくなると実感しております。ただ、データを重ね合わせる際にずれてしまうと十分な効果を発揮できません。ケースによっては、プロビジョナルにCRで小さな突起を複数作って、そこを重ね合わせの起点にするなど工夫が必要な場合もあります。

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