
活動報告
第47回北九州歯学研究会発表会 質問回答
新人発表
竹中崇
Q、第一症例でアンカーの両隣在歯への固定は接着したのでしょうか?
A、ご質問有難うございます。本症例では、グラスアイオノマーセメントにて合着いたしました。
Q、残根廷出の残存歯質の汚染と根管治療についての考察を頂きたいです。
A、ご質問有難うございます。根管治療前は残根であっても必ず感染歯質は徹底的に除去します。一方、根外周まで完全除去しても、当日は周囲歯肉からの出血で根管治療が困難かと考えます。ですので、その当日は歯肉縁下の根上面に水硬性のキャビトン®(GC社製)またはテンポラリーストッピング等で封鎖します。後日ご来院の際、それを外して止血ができていることを確認し、根外周にCRにて根管治療を可能にする暫間的な隔壁を作ります。 この詳細は、歯界展望2001年2月号 の『残根を活かす』にて、当会木村英生先生の執筆がございますので、ぜひ参考にしてくだされば幸いです。
Q、最終補綴までの期間として、根尖部透過像の治癒傾向などは考慮されますか?
A、ご質問有難うございます。ご質問の通り、根尖病変が縮小傾向を示すことを確認してから最終補綴へ移行することが多いです。また、根尖病変の縮小傾向を示すまで期間がかかることもありますので、患者さまに十分な説明を行った上で最終補綴装置を仮着または合着し、エックス線にて経過を追うこともあります。
Q、質問ではないのですが、歯根膜の郭清、だと思います。漢字が違うかもしれません。
A、ご指摘有難うございます。「郭清」で間違いありません。
Q、ケース1 最終補綴の遠心がオーバーに見えたようですが、あれは何か意図があるのですが?
A、ご質問有難うございます。ケース1 左上5番の最終補綴装置遠心部の不透過物は、「リムーバブルノブ」です。発表でも提示していましたように、後続の67番の歯内療法のご依頼を受けましたので、その視野の確保が容易かと考え暫間的にこのような対応をさせていただきました。
Q、矯正的挺出やアプライトなどを行われる際、自費かと思いますが、どの程度に設定されていますか?
A、ご質問有難うございます。仰る通りであります。当院のホームページに料金が記載しておりますので、ご参照ください。
Q、挺出後の補綴物の予知性を高めるためには、どのような工夫をされていますか?
A、ご質問有難うございます。まずは「確実な印象採得」を第一とします。また、挺出後は歯冠/歯根比が変化しますので、単独冠または連結修復か決定には、プロビジョナル期間に十分な配慮をいたします。
Q、病理組織検査はどうしたら出来ますか?
A、ご質問有難うございます。まず切片作製は、SRL社に依頼しております。→https://www.srl-group.co.jp/ 最終的な病理診断は、最寄りの大学病院の病理医に依頼されると良いかと考えます。
Q、歯根嚢胞に対して減圧療法はされないのでしょうか。また、排膿なのか、滲出液なのかの判断はどうでしょうか
A、ご質問有難うございます。歯根嚢胞が疑われ、さらに病理の結果→「歯根嚢胞が確定した」症例での経験にてご返答させていただきます。まず、これらの症例でほぼ共通していたのは、①黄白色の排膿というより“透明がかった黄色の滲出液” ②漿液性ではあるが、若干“糸を引くような”液性 ③排膿特有の腐敗臭は顕著ではない でありました。 ①に関しまして、排膿と比較しても「粘稠性が低く」、その違いをもって歯根嚢胞を疑い、現在ではシリンジによる減圧療法もおこなっております。この減圧療法の詳細は、当会倉富覚、著(下川公一監著)の「長期経過症例から紐解く根尖病変と骨縁下欠損〜その傾向と対策〜」(クインテッセンス出版株式会社)にありますので、ご参考にしてくだされば幸いです。
Q、根尖部硬組織の病理組織は見られましたか?
A、ご質問をしてくださったおかげで、時間の都合上小生のクール内では提示できなかった根尖部硬組織切片を皆様にお見せできましたこと、心より感謝申し上げます。
Q、カリエス除去後、挺出した後に隔壁を行いエンドを行なっております。先生は挺出の前にエンドを行なっていらっしゃいましたが、感染源がある状態での挺出は良くないですか?
A、ご質問有難うございます。残根上部に感染源が残存したまま根管治療を行わずに挺出すると、根管を通じて根尖歯周組織(特に歯根膜)に炎症が励起され、しかも挺出に伴う歯根膜の伸展が生じている中で更なる炎症が助長されるような状況は適切ではないと考えております。一方、質問者様のお言葉の通り、残根状態では「適切な仮封」ができない環境にあります。その際、①小生のCase3のように、骨縁下におよぶ歯根破折(カリエスなし)はあるが“根尖病変は認めない”場合、質問者様と同じように先に挺出→歯内療法とします。 ②根上面に感染歯質(+)あり、かつ“根尖病変は認めない”場合→まず完全に感染歯質を除去し、根管内に綿線等による仮封およびその上部に挺出用のフックをグラスアイオノマーセメントにて設置し、先に挺出開始→挺出後に歯内療法を行う。 ③-A 根上面に感染歯質(+)あり、かつ“根尖病変を認める”場合→まず完全に感染歯質を除去し、後日に歯肉縁下からでも隔壁を立ち上げれるような場合には、先に根管治療→挺出開始を。 ③-B 歯肉縁下からの隔壁も作れないい場合→「外科的挺出」、つまり一度抜歯し→逆根管充填→抜歯窩の高い位置に固定する ④ ③のA or Bもできない場合は、保存不可能の診断になるかと考えます。
河島紘太郎
Q、メタルコアとファイバーコアの使い分けはどのように判断されていますか?
A、ほとんどの症例でファイバーポストコアを使用しています。咬合に問題があったり、部分床義歯の支台となる力のかかる歯はメタルコアを使用することもあります
Q、歯根端切除をする際、ベベルがつかないように気をつけることがあれば教えてもらいたいです。
A、術前にCT画像にて歯根の方向を確認しております。
Q、メタルコアの除去はどうされていますか?
A、鉗子などを使用すると、残存歯質への不要な力がかかり、歯根破折の危険性を引き起こす可能性があると考え、拡大視野下で除去バーを用いて削合します。ポストが除去しづらい場合は、超音波チップ(エンド用)を使用することもあります。
Q、形成の際、マージンにあててあったインスツルメントは何ですか?
A、歯肉縁下にフィニッシングラインを設定する際、歯肉を機械的に排除するためガムリトラクターを使用しています。圧排用インスツルメントでも良いと思います。
Q、樋状根の根管充填はどのよう行なうのですか?歯根端切除に関してですが、逆根管充填は必要なのでしょうか?再根管治療で十分に根管充填されていたように思いました。根尖切除を行うと歯冠歯根比の問題が生じてくると思いました。
A、提示したケースはMTAセメントを用いて根管充填を行いました。MTAセメントをニエットキャリア(東京歯科商社)というインスツルメントを用いてキャリーし、根管充填用のプラガー(BLコンデンサー ペントロンジャパン)を用いて加圧しています。歯根端切除を行うと歯冠歯根比に問題が出ることもありますので、術前に歯根長を計測しておく必要があります。発表の中でも述べましたが、逆根管充填材(MTA)上に新生セメント質が添加することを期待して逆根管充填を行います。その他スーパーボンドやスーパーEBAセメント等を使用しても良いかと思います。切除した根尖部を確実にシールしておくことが肝要です。
Q、再発防止の対策は何かできるのでしょうか?
A、リコールの間隔を短くして、早期接触等咬合に問題がないかを確認し、該当部位のプロービングを行い確認しています。
エンド修復セッション
倉富覚
Q、素晴らしい発表ありがとうございます。プレカーブを付与したファイルは使い捨てになるのでしょうか?
A、その患者さんの根管治療が終了するまでは個別に保管しています。治療が終了したら滅菌し、プレカーブファイルばかり集めたファイルボックスに入れて保管し、再利用することもあります。
Q、左上2番の拡大号数を教えていただけると幸いです。また、その基準などもあれば教えていただきたいです。
A、最終拡大号数は#45でした。白い削片と綿栓に腐敗臭がないことを拡大終了の基準としています。根尖病変を有する歯の根尖孔の大きさを調べた研究(日歯保誌.1984)では#35±15の範疇でしたので、通常はは#50まで拡大することが多いですが、湾曲が強い根管では#40~45で終了することもあります。
Q、手用のNiTIファイルもありますが。ご利用になることはありますか?その際、注意点があったらご教示ください。よろしくお願い申し上げます。
A、手用のNiTiファイルは使用していません。機械用のNiTiファイルを根管口付近の歯質の整理に用いることはありますが、根尖部は必ず手用のステンレススチールファイルで仕上げます。
松木良介
Q、ニッケルチタンと手用ファイルで予後に違いはありましたか?
A、:自身の臨床実感として手用ファイルのみで根管拡大していた時期が短いためあまり比較できませんが、文献的には差異はないようです(Ng et al. (2011, 2007))。しかし手用ステンレススチールファイルによる湾曲根管の攻略は技術を要しますが、柔軟性に富むNiTiファイルによる根管拡大は術者の技術差が少ないと考えられるため、技術の平準化という観点では有利なのではないかと考えます。
青木隆宜
Q、上顎側切歯のような湾曲位置が深い根管でもマイクロスコープで見ながら湾曲根管にアクセスすることは可能でしょうか。
A、支台歯形成されており縁上歯質があまりない歯や、根管が短かったり太ければ見ることはできます。しかしそれ以外の歯であれば難しい場合もあります。
津覇雄三
Q、左上2番の盲孔下のう蝕はデンタルでは大きくないように見えましたが、CT撮影すると判断したのは何故でしょうか?またその基準について教えて頂ければ幸いです。
A、盲孔化のう蝕は歯髄側に入り込んでいるため浅そうに見えても深い可能性があるため、できる限りCTを撮るようにしています。
Q、盲孔や幼若永久歯の裂孔を治療介入の基準があれはご教示頂きたいです
A、深さはわかりにくいですのでその基準としては、Dーファインダーで触診をしてファイルが刺さり、う蝕が認められるようであれば行なっております。
Q、AIPCは何歳まで行いますか?
A、あまり高齢者では行いませんが、60歳くらいまでは行なっております。高齢者になる程慢性う蝕が多く一度で削りやすくなりますので、虫歯も露髄しにくいです。
Q、無麻酔の処置ですか?
A、昔は無麻酔で行っておりましたが現在は全て麻酔下で行っております。慢性う蝕はそんなに削っている時には痛みはありませんが、急性う蝕はやはり痛みを感じやすく、一回めでも辺縁封鎖のためにセメントエナメル境のう蝕は徹底的に除去したいので麻酔下で行っております。
樋口克彦
Q、舌側転位している側切歯の隣接面カリエスの充電におすすめのマトリックスはありますか?
A、おすすめのマトリックスとしてはジーシのエピテックスになります。自分で長さなどを調整してプルスルーテクニックなどでも使いやすいと感じております。また内側に入った歯牙であればマトリックスの装着が難しい場合があるのでその時は敢えてフリーハンドで行うこともあります。
ペリオ修復セッション
河島紘太郎
Q、歯石などの付着はなかったとのことですが、それは歯周基本治療をしっかり行われた結果と思ってよろしいですか?
A、歯周基本治療の手技とは関連が低いと思います。推察の域を超えませんが、斜切痕から口蓋溝にプラークによる感染が起き、根周囲の付着の急速な破壊を引き起こしていると思われます。早期に対応したため、歯石の沈着が無かったと考えております。感染後長期間が経過していたら歯石化していたのではないかと思います。
力丸哲哉
Q、ダイレクトベニアは、プラークコントロールが悪い患者さんには不向きと考えていますが、どう考えていらっしゃるでしょうか?
A、その通りだと私も思います。ダイレクトべニア修復に限らず歯周基本治療を徹底的に行った後に、修復治療を行うことが必須だと考えています。そうしなければ、歯肉から出血し、適切な接着・充填操作は出来ないと考えます。
田中憲一
Q、ラミネートベニアのプロビジョナルは単冠ですか?仮着はどの材料を使っていますか?また、プロビジョナルの期間はどのくらいですか?
A、昔は、ボンディングなしのコンポジットレジンでかちゃくしてました。、今はプレミアムセメントを使用しています。複数歯の場合は、連結します。期間は短い方が良いと考えています!脱離したりコンタミネーションを少なくしたいからです。
欠損セッション
力丸哲哉
Q、インデックステクニックで使ったレジンの選択理由を教えてください。
A、私はクラレのマジェスティESフロー(Super Low)を用いていますクリアインデックステクニックに流動性の高いフロアブルCRを用いると、インデックスのわずかな、たわみとともに陰圧が生じて、気泡混入しやすいと感じているからです。クリアインデックステクニックに流動性の高いフロアブルCRを用いると、インデックスのわずかな、たわみとともに陰圧が生じて、気泡混入しやすいと感じているからです。
Q、ダイレクトブリッジだとプロビジョナルレストレーションが装着できないと思いますが、ポンティク基底面などの形態や清掃性などの判断はどのように決めているのか教えてください。
A、デジタルワックスアップを行ったときに決めております。ポンティックの基底面の形態を色々な角度からよく観察し、デジタル上で何度か修正を行い、形態や清掃性に問題のない形にしています。
Q、基底部の形態はインデックスに付与されているのでしょうか?術者が付与するのでしょうか?
A、基本インデックスに付与されていますが、ジャストの量で充填するのは難しいです。もし、CR充填量が多くあふれ出た場合、メスや形態修正用のバーで修正しなければなりません。それが不安な場合は、ヴァリストリップスなどを用い、基底面形態のみ追加充填する場合もあります。