活動報告
第46回北九州歯学研究会WEB発表会「抄録」
「PET(Partial Extract Therapies) を行った一症例」
青木 隆宜 <<紹介動画 >>
インプラント治療において抜歯後の硬軟組織の吸収に頭を悩まされることが多々ある。
喪失した硬組織の回復を行うために、いくつかの方法が選択肢として挙げられるが、前歯部など審美性が求められる部位でのインプラント治療についてはその選択が難しいと感じる。
場合によっては大規模な骨造成やその後の軟組織の増大術が必要になるケースもあるが、頬側歯質が健全である場合、PET(Partial extraction therapies:部分抜歯治療)という方法を用いることで、抜歯即時後の形態変化を少なくすることが可能であるとされている。
今回、2本の歯の残根歯根を活用することによって、ポンティック部や補綴部の歯肉形態の審美的な保存を図ったインプラントブリッジ症例を提示し、PET治療の有効性について述べたいと思う。
歯を残す・歯を守る CR修復 -sustainableな歯科治療を目指して-
河島 紘太郎 << 紹介動画 >>
2000年代初頭よりMIコンセプトが提唱され、歯科治療において最小限の治療介入で最大限の治療効果を上げることが命題となっている。また、患者もインターネットによる情報からかMIによる接着修復治療を望む患者も多くなったと感じる。接着歯学は我が国が世界に先駆けて開拓してきた学問分野であり、臨床において欠かせないテクノロジーであると考える。さらに歯科用金銀パラジウム合金の価格は高騰し、我々歯科医師も可及的に金属を使用しない治療をしたいと考えるのは自然な流れである。本発表では、Made in Japanの接着技術を応用することで歯の延命を図り、sustainableな歯科治療を行うための一提案をしたい。
瀬戸 泰介 << 紹介動画 >>
日常臨床において、カリエスが歯肉縁下に及んでいる歯に遭遇することが多い。そのような場合、修復しても術後に様々な問題を引き起こす可能性があるため、補綴前処置として歯冠長延長術が有効である。しかし、歯冠長延長術の欠点は支持骨を削除する事であり、単独で行うと隣接歯の支持骨を失うことで歯槽骨の連続性に乱れが生じ、かえって歯周組織の永続性に疑問が残る事がある。そのような時は矯正的挺出を併用すると骨の削除量を最小限におさえる事が可能となる。そこで今回は矯正的挺出を併用した歯冠長延長術について考察したい。
竹中 崇 << 紹介動画 >>
2本以上のインプラント上部構造を連結する際、より高い適合精度が求められる。一方、スクリュー固定様式を採用する場合、各インプラント間の正確な位置情報の採得が必須となる。特に、内部回転防止機構を有するインプラント体の使用であれば、中間構造体となる連結用アバットメントの選択が推奨される。さらに、連結作業過程における適合確認手順および連結後その精度確認を行うための対象物の存在が重要となる。今回、長期安定性を目指したインプラント上部構造製作における臨床上の留意事項について提示したい。
「当院におけるIOSを中心としたデジタルソリューションについて」
筒井祐介 << 紹介動画 >>
現在、口腔内スキャナー(IOS)は一般の歯科医院に広く普及し始めているように思う。実際の臨床実感として補綴治療、修復治療への口腔内スキャナーの使用は、単冠等限定された範囲であれば十分な精度が担保出来ていると感じている。しかし、広範囲の補綴治療に口腔内スキャナーを使用する場合は問題点も多い。例えばスキャンパス等に関わるデータのゆがみや、口腔内をスキャニングしたIOSのデータだけでは顎関節や顎顔面領域との位置関係をCAD上に再現する事ができない事が自分の中で課題となっている。まだ試行錯誤をしている段階ではあるが、上記の問題への対応を中心に当院でのIOSを中心とした補綴治療を供覧頂きたいと考えている。
津覇 雄三 << 紹介動画 >>
現在、歯科医院においてレーザーを所有している先生は毎年増加しているがレーザー治療となると従来の方法から離れられず、使用する頻度の少ない先生もおられるのではないかと思う。その中でもEr:YAGレーザーは表面吸収型のレーザーで、熱変性層も少なく深部組織への影響が少ない。よって安全にコントロールしやすいため、術者にとっても使用しやすいレーザーであり、疼痛も少なく治癒も早いことから、患者さんにも優しいレーザーといえる。今回は症例をいくつか提示しながらEr:YAGレーザーの作用や私なりの術式を紹介し考察する。Er:YAGレーザーを十分理解していただき、明日からの臨床に少しでも取り入れていただければと考えている。
芳賀 剛 << 紹介動画 >>
重度歯周疾患に罹患した歯の予後は不良であることが多く、早期にインプラントに置き換えることも選択肢の一つとなる。しかし、インプラント周囲炎等の問題も多々あり、インプラントも万能ではないと考える。また比較的高齢な方の場合、インプラント治療を選択したとしても顎底の大きな吸収を認める場合、それに伴うGBR等に耐え得るのか、さらに全身疾患との兼ね合いも考慮する必要がある。コルテリーニらの報告では、多くのホープレスな歯が保存されているのも事実である。ホープレスな歯を出来るだけ保存することが可能となれば、術者・患者双方にとってメリットは多大であると考える。今回、エビデンスに基づいて重度歯周疾患に罹患した歯の保存を試みた症例を供覧させていただく。
『全顎治療における感染根管治療』
松木 良介 << 紹介動画 >>
歯内療法において、疼痛や排膿の持続などの問題が思うように解決できない場合、修復治療までの治療工程のうち大部分を根管治療に割くことになる。効率よく根管治療を進めるためには、根管の病態を的確に把握し、その原因は何であるかを考え狙って治すことが必要である。しかし大きな根尖病変を有する根管などは治療の反応を見極めるのに時間を要する場合もある。そのような時は他部位の治療を行いながら経過を見ていくことになるが、治療順序を整理して治療全体が冗長にならないように考える必要がある。そこで今回、多数歯の感染根管治療が必要であった症例を通して、治療の進め方の一例を提示したい。
松延 允資 << 紹介動画 >>
部分欠損補綴に関し、高い成功率からインプラント治療が第一選択となる傾向にあるが、当院における実際の臨床においては未だ部分床義歯による治療の方が圧倒的に多く、一般的にも日本の保険制度もありクラスプデンチャーを作製する機会が多いのではないだろうか。さらに金銭的な問題だけでなく、超高齢化が進む社会の中で全身的な問題により部分床義歯を選択せざるおえないこともある。抜歯装置とも揶揄されるクラスプデンチャーであるが、機能回復とともに残存歯の保全がなされ、さらにできるだけ再製がないような部分床義歯、とくにクラスプデンチャーに対する取り組みについて発表させて頂きたい。
『臼歯部におけるプロビジョナルレストレーションの調整』
山本 真道 << 紹介動画 >>
臼歯部におけるプロビジョナルレストレーションの役割は、歯冠補綴装置の製作に際し、咀嚼機能の回復や清掃性の向上に重点を置くことである。
実際の臨床で歯肉縁下に形成した場合、そのあとの歯肉圧排、印象採得が容易となるように考慮し、印象採得時まで脱離させないような適合の良いプロビジョナルレストレーションの的確な調整が必要不可欠になってくる。
さらにプロビジョナルレストレーションの調整の良否が、ダイレクトに印象採得時のエラーに繋がることも、少なくないと思われる。
そこで今回の発表では、臼歯部における実際のプロビジョナルレストレーションの調整方法について、症例を交えて具体的に提示させていただく。
皆様の臨床のヒントとなるポイントがあれば幸いである。
「痛くない」・「外れない」・「よく噛める」 ~患者に喜ばれる全部床義歯治療~
力丸 哲哉 << 紹介動画 >>
日本は現在、少子超高齢化社会を迎えており、国民全体に占める高齢者の割合は増え続けている。健康長寿のためには、意欲に満ちた生活習慣を保ち、口腔や体の手入れを怠らず,健全な食習慣や咀嚼・運動機能を保つことが大切である。『老後をいかに健康に楽しく過ごせるか?』我が国において非常に重要な問題である。無歯顎患者の中には、義歯の不適合により日常生活に困っており、義歯を未使用のまま生活されている方も少なくない。患者は、「痛くない、会話しても外れない、何でもよく噛める全部床義歯」の使用を強く望んでいる。今回は、日々の生活を楽しく過ごせる全部床義歯治療への取り組みを発表させて頂きたい。