歯科のスタディグループ北九州歯学研究会

活動報告

第44回北九州歯学研究会発表会 中野充先生追悼講演

2月9日、第44回発表会が、福岡市のJR 九州ホールにて行われた。今大会は「トラブル症例から学ぶ -その傾向と対策-」をテーマに、そして、昨年6月にご逝去された故 中野充先生を追悼する会として開催された。追悼講演は下川公一先生がご登壇される予定だったが、下川先生も去る12月にご逝去され、会員一同大きな悲しみの中発表会を迎えた。だが当日は、大きなホールが満席となる約650名もの方々にご参加いただき、改めて両先生のお人柄とご人脈を肌で感じた。

中野充先生追悼講演

九州歯科大学時代の後輩である松延彰友先生と村上和彦先生がご登壇された。中野先生は東京での研鑽後の1970年代に、バンド冠から鋳造冠へ、綿栓根充からポイント根充へという変革、そしてペリオの重要性という近代医学を九州に持ち込んだ第一人者だという。北九州歯学研究会の設立から今日に至るまでの発展は、まさに中野先生の秀れたご見識とご活躍、そして人情味溢れた指導力に負うところが大きいことを知り、会員の一員として熱いものが込み上げた。

個人発表1

中野宏俊先生の「父の背中と症例を追いかけて〜保存への挑戦〜」は、父から子へと引き継がれた症例を発表し、親子診療20年で脈々と継承されている保存治療に対する熱い信念を感じさせた。

個人発表2

松延允資先生は「エムドゲインを用いた姿勢療法への挑戦」と題し、エムドゲインを用いた再生療法とGBRの症例を数多く紹介し、‘抜かなくてはならない歯を救うことができる’という言葉でエムドゲインの有用性を強調した。

個人発表3

樋口克彦先生の「歯冠形態を考慮した全支部コンポジットレジン修復への挑戦」では、左右中切歯の対称性が得られるよう努力した症例など、形態に焦点を当てた発表を行なった。

午後の部

「トラブル症例から学ぶ歯科臨床」と題し、3名の演者がトラブルに難渋した症例を提示しその対処法を検証した。

咬合編

甲斐康晴先生の「歯列咬合の影響を考える」では、誤った咬合平面の付与が前歯歯周組織の破壊へと繋がった全顎治療症例の反省を踏まえ、顎関節形態をも考慮しながら、破壊を引き起こさない接触ガイドを見極める取り組みを紹介した。

ペリオ編

「トラブル、トラブル、トラブル」と題した白石和仁先生の発表では、20年超経過症例を振り返り、トラブルに真正面から向き合ってきたからこそ見えてきた治療計画や術式、材料の選択を経験則と学術双方の視点からまとめた。

インプラント編

榊恭範先生の「NO IMPLANT, NO LIFE」では、若かりし頃の治療を提示し、診査診断に関連したトラブル、治療中のトラブル、経過観察中のトラブルという3つのステップに分け発表した。良好な経過症例の発表とは比べものにならないほどの視点を与えてくれた内容で、会場からのデスカッションも活発であった。

まとめ

歯科の歴史をみると、先人達の業績や失敗を踏まえながら、技術の進歩とともに徐々に発展してきていることを感じる。今大会は、演者の挑戦や過去の失敗を通じ、私達後進歯科医に進むべき道を示してくれたように思えた。故 中野充先生、故 下川公一先生の偉大な足跡を辿り、今後の歯科医療をさらに発展させるため、本会会員が一丸となって勇往邁進することを改めて誓う発表会となった。

次回第45回は2021年2月13(土)・14(日)の2日間にわたり、故 下川公一先生を追悼する会としてJR 九州ホールで開催予定である。

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